星野リゾートが日本初の「監獄ホテル」|重要文化財「旧奈良監獄」を高級ホテルに|2024年オープン|海外事例も

ここ数年、コロナ禍の影響もあって日本全国で大ブームとなっているグランピングですが、日本にグランピングを初めて導入したことでも有名なのが星野リゾートです。

それまで「ちょっと手の込んだキャンプ」くらいのイメージだったグランピングを、現在のように「ラグジュアリーな滞在をしながら自然を感じられるリゾート」として確立したパイオニアと言っても過言ではないでしょう。

そんな星野リゾートが次のプロジェクトとして発表したのが、なんと「監獄ホテル」

奈良県にある国の重要文化財「旧奈良監獄」をホテルにイノベーションするそうなのです。

古い監獄をホテルにイノベーションするというのは、実は海外ではいくつか事例があるのですが、日本では初の試みなのだそう。

そこで今回は、「旧奈良監獄」の紹介と、星野リゾートの星野代表の構想についてまとめました!

海外のプリズンホテル事例もご紹介するので、興味のある方は最後まで読んでみてくださいね。

旧奈良監獄とは?

奈良監獄(奈良県奈良市)は、監獄施設の近代化を目指して1908年(明治41年)に誕生した監獄で、日本最古の刑務所です。

1908年というと、今から100年以上前ではありますが、それまで日本には現在のような形の刑務所はなく、牢屋(牢屋敷)や徒場(徒刑場)に罪人は収監されていたそう。

明治になって海外から日本に外国人がやってくるようになると、日本で罪を犯す外国人も現れますが、当時は治外法権で、日本で裁くことができませんでした。

それを覆すために、日本もしっかりとした法治的な近代国家であるということを海外に見せ、外国人の罪人も日本国内で収監することができるように、監獄施設も欧米に習ったスタイルで・・・と建造されたのが奈良監獄。

「千葉監獄」「長崎監獄」「金沢監獄」「鹿児島監獄」と、同時期に建設された監獄は奈良監獄も含めて「日本五大監獄」と呼ばれています。

この「監獄の近代化」という制作はアジアでも注目され、中国などから視察が訪れていたのだとか。

そして建設から2年後の1910年には、当時定員650名の収容人数が一時935人にもなりました。

正面には存在感のある赤レンガ造りでロマネスク調の正門がそびえ、放射線状に独房が並んだ建物の形は、まさに西洋の刑務所のスタイルですよね。


(出典:wikipedia


(出典:former-nara-prison.com

奈良監獄を設計した山下啓次郎氏は、現在の東京大学工学部から警視庁に入り、その後司法省にいた時に欧米へ刑務所の視察を行った人物で、上に揚げた5つの監獄全ての設計を手掛けています。

そんな背景もあり、まさに当時の刑務所を舞台にした映画「ショーシャンクの空に」を彷彿とさせるデザインとなっているわけですね。


(出典:former-nara-prison.com

このように、看守がいる棟を真ん中にして、囚人が収監されている建物が放射線状に並んだ構造は1825年にアメリカで確立されたもので、看守の目がどの収監棟にも行き渡るように考えられています。

室内はこんな感じ。


(出典:former-nara-prison.com

江戸時代までは、雨や風が吹き込む1.5畳ほどの座敷牢に数人が収容されていたとのことなので、それに比べると滞在環境が大幅に改善されたことがわかります。

建設から14年後の1922年に名称が「奈良監獄」から「奈良刑務所」に変更され、1946年以降は「奈良少年刑務所」として少年犯罪に特化した施設として多くの若者を収監してきた「旧奈良監獄」ですが、2016年に耐震性への懸念や老朽化で、閉鎖することとなりました。

その後2017年に国の重要文化財に指定され、2019年には資料館として一般公開もされていましたが、重要文化財の保管のために膨大な金額がかかることもあり、宿泊施設として活用する案が浮上。

そして参画することが決まったのが、星野リゾートというわけです。

どんなホテルになる?

旧奈良監獄の建物を利用した宿泊施設ということで、監獄の雰囲気や歴史ある建築物の重厚感を生かして、どんなホテルになるのか、気になりますよね。


(出典:former-nara-prison.com

星野リゾートの星野佳路代表によると、最高級ラグジュアリーホテルにする計画なのだそう。


(出典:former-nara-prison.com

現状では無機質な独房が並んでいる監獄の、独房をつなげてリノベーションし、最高級の部屋を48室作る構想になっているそうです。


(出典:former-nara-prison.com

刑務所というと、暗くて狭くて・・・みたいなイメージですが、広々とした廊下に高い天井、そして重厚感のあるドアの雰囲気もレトロ感があって素敵です。


(出典:former-nara-prison.com

このドア、部屋の内側にはノブがなくて、施錠されてなくても内側から開けることはできない仕組みになっているのだとか。

同じ部屋に複数人を収容するのではなく、独房が並んでいるスタイルで、当時はこんなふうに使われていたそうです。


(出典:former-nara-prison.com

独房をいくつか繋げてラグジュアリーな客室にするとのことですが、監獄の雰囲気や当時の設備をどのくらいまで活かしていくのか、楽しみです。

ホテル改修後のイメージ図 ↓

(出典:hoshinoresorts.com

重要文化財ということなので、大きな改築が難しい側面もあるはずですが、そのあたりどうなるのかも気になります。

また、国の重要文化財という貴重な建造物を、ホテルとして活用しながらその収益で維持・保存をしていかなくてはならない、ということで、試算では年間40万人の利用がなくてはいけないということ。

年間40万人というと、単純に1年360日で割ると、1日あたり1095人、それをさらに部屋数の48で割ると、1部屋に毎日22人が宿泊しないと成り立たない計算になってしまいます。

さすがにそれは無理・・・ということで、奈良市と星野リゾートが協力し、隣接する隣接する鴻ノ池運動公園にスケードボードやランニングなどアーバンスポーツが楽しめる施設を作って地域の活性化と観光客の呼び込みを計画しているのだそう。

資料館など一般公開される部分も残されるのではないかと思うので、宿泊客のみならず、一般の観光客も多く訪れる施設になると良いですね。

海外の監獄ホテル

旧奈良監獄を2024年開業の監獄ホテルするというプロジェクトは、日本では初の試みです。

文化遺産を維持する収益を確保しながら、保全するという目的で、大きな意味のあるプロジェクトなわけですが、このように閉鎖した監獄(刑務所)をリノベーション&コンバージョン(用途変更)してホテルにしている事例を一部、海外からご紹介します。

アルカトラズホテル(ドイツ)

alcatraz hotel
(出典:businessinsider.com

ドイツのアルカトラズホテルは、1867年から2002年まで刑務所だった場所を改装し、56の客室を持つ宿泊施設に生まれ変わりました。

鉄格子の窓や囚人ベッド、トイレなどの設備がそのまま残され、伝統的な刑務所の朝食とされるプンパニッケル(黒パン)とジャムを味わうことができます。

Alcatraz Hotel: Kaiserslautern, Germany

ホテル・カタヤノッカ(フィンランド)

Premier Hotel Katajanokka
(出典:businessinsider.com

フィンランドのヘルシンキ中心部・カタヤノッカ島にあるホテル・カタヤノッカは、かつて囚人が裁判を待つための郡刑務所として使われていて、フィンランドの第5代大統領リスト・リッティ(1889年 – 1956年)が収容されたと言われています。

現在はオリジナルのレンガの壁が残るホテルとなっていて、地下にはレストランがあり、壁沿いに受刑者のオリジナルの碑文を見ることができます。

ミニマルなデザインの客室は、かつての独房を2~3室組み合わせたもので、広いスイートルームにはサウナなどの豪華な設備が整っているとのこと。

独房を組み合わせている点や、高級路線のホテルになっている点は、奈良監獄と通じるものがありますね。

Best Western Premier Hotel Katajanokka: Helsinki, Finland

オタワ・ジェイル・ホステル(カナダ)

ottawa jail hostel
(出典:businessinsider.com

カナダのオタワ・ジェイル・ホステルは、1962年から1972年までカールトン郡の監獄として使用されていました。

この監獄は、囚人が非人道的に扱われていたことで有名で、暖房も水道もなく、狭い独房に最大150人もの囚人が暮らしていたのだとか。

刑務所の2階は死刑執行所として使われていたとのことで、元囚人の幽霊を見たという人もいるそうです・・・!

絞首台、独房の鉄格子、石の壁など、建物の大部分が当時のまま残されているとのことで、よりリアルな刑務所体験ができるホテルと言えますね。

Ottawa Jail Hostel: Ottawa, Canada


以上、星野リゾートが奈良県奈良市に2024年オープンを計画している、旧奈良監獄を改修した「監獄ホテル」の概要と、海外の事例をご紹介しました。

「監獄に泊まってみたい」派と、「見学だけで十分・・・」派に大きく好みが分かれそうな施設ですが、どちらも兼ね揃えていているということなら、観光需要が見込めそうですよね。

個性的な滞在をしてみたい方、廃墟や古い建物(遺構)が好きな方には、是非宿泊を体験してみて欲しいです。

参考にしていただけたら幸いです!

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