ここ数年、木材の値段が上がっているという話をよく聞きます。
元々世界的に木材の供給が減っていることに加え、コロナ禍でリモートワークをする人が増えたアメリカで、低金利政策などもあり、新築住宅が増えたことから、日本に輸出されていた木材が大幅に減ったことが理由と言われています。
さらにウクライナ情勢の影響もあり、木材の輸入は大幅に減少、ガソリンなど輸送費の高騰もあって、輸入木材の価格の上昇は収まる気配がありません。
輸入建材に依存する部分が大きかった日本の住宅建築業界は、この木材の高騰により打撃を受けることになってしまいました。
これまでは輸入木材よりも高価と考えられてきた日本の国産木材ですが、このウッドショックの打開策として林野庁が始めたのが「国産材転換支援緊急対策事業」。
これまで輸入に頼ってきた木材の供給を、できるだけ国産でまかなえるようにするために取られた措置で、臨時的とはいえ援助を得ることができます。
2022年5月31日に第1回の公募が始まり、2022年9月現在で2次募集が行われている状況で、予算にもよるとのことですが、今後も3次・4次と続いていく可能性は十分にあると思います。
というわけで今回はこの「国産材転換支援緊急対策事業」の概要や申請方法、条件などについてまとめました。
「国産材転換支援緊急対策事業」という名前だけ見ると、日本国産の木に限った支援のようですが、実際には対象となるのは以下になります。
ロシア産材(ロシアで加工された製品・半製品)以外の
なので、国産に限らず、ロシア産以外であれば、輸入材も対象となります。
国産材転換支援緊急対策事業で受けられる支援は、大きく分けて3つあります。
日本国内の原木や木材製品の遠距離運搬にかかるコストの1/2を支援してもらえます。
国産の木を使おうと思っても、林業が盛んな地域ではない場合や、使いたい木材の原木が近隣で手に入らない場合に、遠い場所から運搬する費用ということで、対象となる距離は以下になります。
ただし、スギの木に関しては日本全国どこでも基本的には手に入ることから、事業実施者がこの助成金を使うことで原木の取扱量を増やすという条件付きでの支援となります。
詳しい内容はこちらから→運搬支援 説明資料PDF
日本国内で木材がこれまでと違う流通をすると、一時的に原木や製品をを増産する必要がでてきます。
もともとの保管場所では不足し、一時保管のために別途経費がかかってしまうことを想定し、その場合の経費を1/2支援してもらえます。
ただし、事業者が持っている土地や倉庫を使用する場合には支援対象にならないほか、以下の条件があります。
その他、詳しい内容はこちらから→一時保管支援 説明資料PDF
支援の3つ目は、建築用木材の転換促進です。
林業や木材加工業に関わっている人以外だと、こちらの支援のほうが関わりが大きいかと思います。
対象となる建築物は、戸建住宅から学校、病院、公衆トイレ、老人ホームなど多岐に渡っていて(リストはこちら)、これから新築で建物を建設する場合は該当する人も多いのではないでしょうか。
支援の内容はざっくりというと、これまでロシア産の部材を使って行っていた建設を、ロシア産でないものに変えると、その分面積に応じた金額が支援される、というもの。
支援対象となる部材は、以下の3つで、支援額も異なります。
工務店さんなど、建築に関わっている方ならきっとわかる部材ですよね。
要項に載っている支援の一例を挙げると・・・・
一戸建ての住宅 (2階建、 延べ床面積 195.7㎡ )の場合
【従来の材料】
↓ ↓ ↓
【令和4年4月28日以降に部材発注】
杉 ・ ヒノキ ・ 米松国産材マークのカラマツ合板・SPF を上記ロシア産の部材に差し替え
建て方完了時・施工時合計:37.4㎥ に対して、¥1,009,000の支援額となります。
支援額の上限は¥15,000,000ということなので、住宅よりも大きな規模の建築物の面積にも適用できますね。
国産の木を使うことでコストが高くなる場合でも、支援金があるおかげでかなりリーズナブルになるのではないでしょうか。
部材の差し替えは、対象になる4つのうちのどれか一部でもOK(下地材だけなど)。
条件としては、これまでにロシア産の部材を使っていた部分を、国産または別の輸入部材に変えた、という証拠が必要になるので、もともと国産の木材を使っていた場合には適用されません。
また、「建築物」に対しての支援ということなので、ウッドデッキなどの構造物は含まれません。
(→ウッドデッキに適用される助成金は、外構部の木質対策化実証支援型事業があります)
その他、詳しい内容はこちらから→建築用木材の転換促進支援 2次募集 説明資料
以上、「国産材転換支援緊急対策事業」の概要や申請方法、条件などについてまとめました。
参考にしていただけると幸いです。