3年に及んだコロナ禍も終息し、日本にも外国人観光客が戻ってきました。
日本を訪れる海外観光客の中には、リピーターとして日本に何度も訪れる人も多くいます。
「京都」「浅草」「日光」といった、ステレオタイプの観光地は既に経験した観光客が、より多様な形の旅を日本でしてみたい、というニーズに合わせて、観光の形態も変化しています。
「エコツーリズム」や「ジオツーリズム」など、より日本の地形や気候、文化を楽しむ観光形態から、今注目されているのが「アドベンチャーツーリズム」。
そこで今回は、海外からの観光客だけでなく、日本人でもとっても楽しめそうなアドベンチャーツーリズムについて、事例とともに紹介していきます!
アドベンチャーツーリズム(AT)とは「アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」のことをいいます。
連想できる組み合わせとしては・・・
・トレッキングとご当地グルメ食べ歩きの組み合わせ
・ラフティングと古民家宿泊
・国立公園でのウォーキングと茶室体験
みたいな感じでしょうか(あとで実例を見てみましょう!)。
アドベンチャーツーリズムは、ただ単に観光地を回るというだけでなく、「その地域独自の自然やありのままの文化を地域の人たちと一緒に体験し、旅行者自身の自己変革や成長の実現を目的とする」旅行体系なのだそう。
普段の生活では見ることのできない自然や、体験したことのない文化に触れるというだけでなく、体感したことで人として学びがあり、成長することができる観光ツアーってことですよね。
これまでも世界的には「アドベンチャーツーリズム」は存在していましたが、これが日本で注目されるようになってきたのは、ここ数年です。
特にインバウンド(海外からの旅行者向け)のサービスとして、政府も令和3年から推進しているのですが、それにはいくつか理由があります。
例えば、海外から一度に多くの観光客がやってくる「大型観光船ツアー」のお客さんは、船からのバスツアーに大勢で参加することがメインでしたが、「大人数で移動したり、ありきたりな観光をするのはつまらない」「家族だけで特別な体験を(お金がかかっても)したい」と考える人たちも一定数います。
そういう人たちほうが、バスで観光をしてちょっとソフトクリームを食べるだけのパターンよりも、多くのお金をツアー中も使ってくれるというのはなんとなく想像できますよね。
名前に「アドベンチャー」とあるため、結構身体を使ったり、ハラハラドキドキの旅行を想像しがちですが、実際にはちょっとした散策だったりトレッキング、サイクリングなど、負荷の少ないプランがほとんどです。
海外の人だけでなく、日本人でも子供からお年寄りまで十分に楽しめそうな旅行形態ですね。
この「アドベンチャーツーリズム」は、インバウンドだけでなく、日本国内の旅行者にも十分に需要がある形態だと思います。
というのも、ここ数年大ブームになっているグランピング施設ですが、多くの施設で「アクティビティ」の提供を行っていて、むしろ「どんなアクティビティができるか」での差異化が進んでいるからです。
これまで旅行というと、どこか観光地に行ったり遊園地に行ったりして、ホテルはどちらかといえば「食べてお風呂に入って寝るだけの場所」でした。
しかしグランピングの普及で、宿泊施設は泊まるだけでなく、「自然の中で1日中遊べる場所という概念」が生まれました。
自然の中でのアクティビティを楽しみ、地産地消の食材でBBQを楽しみ、地域の温泉につかる・・・、これって「アドベンチャーツーリズム」に通じるところがあると思います。
2023年には全国に1000箇所にも及ぶと言われているグランピング施設ですが、よりアクティビティに力を入れたり、旅行代理店とタイアップをして「アドベンチャーツーリズム」へ力を入れることができれば、より注目を集めることができそうですね。
それでは、実際に旅行代理店から提供されているアドベンチャーツーリズム、どんなものがあるのか、いくつか紹介していきます!
2023年10月現在公開されているプランで、首都圏発着のものを代理店別に見てみましょう。
まずは、日本国内のパッケージツアーといえばJTB。
どんなアドベンチャーツーリズムがあるかというと・・・
(参照:www.jtb.co.jp)
奄美大島の自然を満喫する、3日間のツアー。
飛行機での往復と、滞在中6食、移動のバス代、宿代も含まれているので、3日で120,000円〜 / 名でも高くは感じないですね。
専門ガイドさんが世界遺産の森を案内してくれたり、マングローブの原生林を眺めながらのカヌー体験など、まさに奄美大島の自然を肌で感じることのできるツアーとなっています。
(参照:www.jtb.co.jp)
飛行機はちょっと大変そう・・・という方には、新幹線で東北方面もオススメです。
こちらも、専門ガイドさんと一緒の散策が2回も含まれています。
大自然の中を散策、全く知らない土地だと「道に迷ったらどうしよう」「装備はどんなふうにしなくちゃいけないのかな」など、不安に思う要素も多いと思いますが、専門ガイドさんと一緒ならいろんなお話も聞けて、安心ですね。
JTBでは、半日や日帰りから連泊まで、いろいろなアドベンチャーツーリズムを展開しています。
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旅行代理店大手のHISでは、「エコツアー」として、アドベンチャーツーリズム系のツアーを提案しています。
ちなみに、エコツアーとアドベンチャーツーリズムは「自然を体感する」という意味でかなり近いものとなりますが、定義的な違いは以下のようになっています。
地域の自然や文化を体感するというコンセプトはほぼ同じで、その経験から何を学ぶか、その先どうしていくか、みたいなところで微妙なニュアンスの違いがありますね。
エコツアーは「継承していく」という明確な意図がありますが、名称の「エコ(=エコロジー:環境にやさしい)」よりも「アドベンチャー」のほうが、ワクワク感というか、アクティブ感があるように思います。
さて、ではHISのエコツアーをいくつかご紹介します!
(参照:eco.his-j.com/eco)
最も南の百名山の山頂を目指すツアーで、百名山の最南端・宮之浦岳縦走と島内1周観光が付いた4日間のプランです。
1日の歩行距離がおよそ12時間と、結構タフなものになっています。
丸2日かけて屋久島の山を縦断・・・、これはガイドさんがいないとなかなかできない体験だと思います・・・!
1日の移動距離も多いため、ある程度体力に自信があったり、登山経験のある方向けのプランと言えそうですね。
(参照:eco.his-j.com/eco)
こちらも、スケールの大きい知床ツアー。
ホテルのグレードが選べたり、日によって飛行機の価格が変わったりするため、申し込み時に見積もりを依頼するスタイルです。
出発地も、乗り継ぎ便があれば全国各地から参加可能とのこと。冬の北海道を満喫できるツアーとなっています。
細かい日程は公開されていませんが、
いずれも、専門のガイドさんつきで体験できるそう。
一面の氷の世界、オホーツク海の上を歩くなんて、それこそ知床でこそ体感できるアクティビティですね・・・!
その他、季節によって様々なツアーが組まれていますので、HISのエコツアーページを参照してくださいね。
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今回、大手2社のアドベンチャーツーリズム(エコツアー)をご紹介しましたが、自治体単位や地域の事業者に、これからアドベンチャーツーリズムはどんどん広がっていく見込みです。
世界市場でもアドベンチャーツーリズムは、2022年から2030年の調査期間中に18.1%の複合年間成長率を記録し、2030年には7億6190万米ドルまで成長すると予測されているとのこと。
インバウンドだけでなく、日本国内の観光産業の活性化にもつながることが期待されるアドベンチャーツーリズム、自然の中での宿泊を提供するグランピング業界との繋がりもまた増えてきそうで楽しみですね!
以上、今回はこれからの観光業で広がっていくことが期待されている「アドベンチャーツーリズム」をご紹介しました!
参考にしていただけると幸いです。