「インバウンド」という言葉、ここ数年ネットやテレビなどでよく見るようになりましたね。インバウンド市場、インバウンド対策などの関連用語もよく聞きますが、そもそもどういう意味?
ここでは「インバウンド」の意味と、ビジネス上での対策と効果について解説していきます。
元々は英語の「inbound」が由来の、「外から中へ入る動き」を表すカタカナ言葉です。
業界によって「インバウンド」が意味するところに違があるようですが、昨今特に使われているのは旅行・観光の分野。
メディアでよく見聞きする「インバウンド」は一般的に、「訪日外国人旅行」のことを指しています。
外国から日本への「訪日外国人旅行者」または「訪日外国人向けの観光事業」
この意味を押さえると関連用語の意味もなんとなくわかってきますね。
インバウンド市場 = 訪日外国人観光客を相手に取引する消費マーケットと書きましたが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
外国人旅行者が日本滞在中にお金を使うシーンですので、ホテル代や新幹線代、中国人による「爆買い」などが代表的なもの。
ホテルやお土産物屋以外でも、ちょっとしたものをコンビニで買う、スーパーでお菓子を買うなども含まれるので、その範囲は意外と広く、多くの業種が含まれてきます。
人口減による内需後退が予測されている日本で、今後の経済を支えると期待を集めているのが外国人による国内消費。
2003年から国土交通省が中心となり「ビジット・ジャパン・キャンペーン」として、日本を観光大国にするべく外国人旅行客の誘致やインフラの整備を行っています。
その甲斐あってか、日本を訪れる外国人の数は年々増加。
2014年は1,341万人で世界で22位だった入国者数は、2018年には3,119万人が日本を訪れ、入国者数世界11位となりました。
2018年の国際観光収入は4.5兆円を突破、非常に大きなマーケットへ成長しています。
しかし世界レベルで見ると来訪者数・観光収入ともに、観光大国とはまだまだ言えないレベル。
これは「伸びしろがある」ことを指しているとも読み取れます。
つまり、今後の対策次第では勝算のあるマーケットだということです。
外国人、と一口に言ってもそのタイプはさまざま。
いろんな人たちがいろんな目的でいろんな国から来ている訪日外国人観光客、そのすべてを対象としたビジネス展開は現実的ではありません。
自身の事業で提供できる商品・サービスの需要があるのはどういった人たちなのか。
国は?年代は?団体旅行客か、個人旅行者か。富裕層か、節約派か。などなど細かく設定する必要があります。
絞り込んだターゲットによってその後取るべき対策が大きく変わってくるので、なんとなくではなくしっかりリサーチしましょう。
ターゲットが決まれば、するべき対策も見えてくるはずです。
日本政府観光局(JNTO)が出している「訪日旅行データハンドブック」には世界20市場からの訪日外国人観光客について詳細なデータをまとめてあります。
参考 訪日旅行データハンドブック2019日本政府観光局(JNTO)観光庁のアンケートによると、外国人観光客の94.7%が日本旅行に「大変満足」「満足」と回答しています。
では、旅行中に困ったことを見てみましょう。
外国人観光客挙げている「旅行中に困ったこと」項目こそ、解決すれば魅力に転じるポイントです!
(出典:観光庁)
海外では無料Wi-Fiが一般的であるため、外国人が日本滞在中に困ったことの上位に「Wi-Fi環境」が挙げられています。
訪日外国人観光客の満足度をアップさせるために、Wi-Fi環境の充実は不可欠。すぐに導入を検討してください。
提供されている店舗向けWi-Fiサービスはいくつかありますので、初期費用、月額料金、同時接続台数、通信速度などを比較して合ったものを選びましょう。
訪日外国人観光客の多くが参考にした情報にSNSや友人知人の口コミを挙げています。
満足度を上げればよい口コミに繋がり、自然と次の利用者を呼ぶ循環に入る可能性大です!
日本はというと、キャッシュレス普及率は20%程度。中国では60%超え、韓国では90%超える普及率です。
外国人観光客の半分以上がこの2ヵ国からの旅行者、キャッシュレス決済が常識な国から来ていることになります。
普段慣れている支払方法が使えなければ不便に感じてしまいますよね。
慣れているキャッシュレス決済が使えれば、両替して持ち歩く現金を減らせるので旅行者にとってメリットがあります。
また、手持ち現金がない場合でも消費してもらえる店側のメリットもあります。
インバウンド市場を狙うのであればキャッシュレス決済の導入を検討してください。
売上の回収も、入金サイクルが短いところ、ひと月の入金回数を選べるところもあります。
キャッシュレス機器導入無料キャンペーンを実施しているクレジット会社もありますし、QRコード決済であれば費用が掛からない導入方法もあります。
また、ターゲットにとって支払いやすい決済方法に対応しましょう。
どの業種でも対応が欠かせないのが多言語対応ではないでしょうか。
実際は対応していない場所が多く、訪日外国人が旅行中に困ったことの上位に「多言語表示の少なさ」との回答が目立ちます。
交通機関などでは地図や案内板などの多言語表記が増えてきましたが、飲食店や小売店ではまだまだ対応が不十分です。
(出典:観光庁)
このアンケート結果から、多言語表記が求められているポイントがわかります。
飲食店や小売店では、売上げの増加を実現するためにもメニュー・商品の情報や売り場案内などから多言語化していきたいところ。
コストも時間も掛かるので、すべての言語に対応することは難しいでしょう。
どの言語に対応すればよいのかを見極めることも重要。
思い浮かぶのは英語。母国語として話す人の他に使える人が多いので、まずは取り掛かりたい言語です。
あとは人数多さで言えば中国語。しかし中国で使われている簡体字と、香港・台湾で使われている繁体字では同じ中国語とはいえ文字や表現に違いがあるそう。可能であれば両方対応、難しければターゲットに合わせて選択していきましょう。
外国人観光客の多くは日本人の日常と触れ合うことを望んでいます。
気負わず日本人のお客に対するのと同じように、いつも通りの接客をすることが大切です。
多くの訪日リピーターは日本人スタッフのコミュニケーションについて「以前よりも改善されている」と回答しているものの、スタッフの語学スキル不足により困ったことがあるという調査結果があります。
(出典:観光庁)
このアンケート結果を見ると、「指差し会話シート」なるものを要望する意見が目立っていますね。
各自治体などが業種ごとの会話シートを公開しており、だれでも利用することができます。
そのままはもちろん、ご自身のサービスに合わせてカスタマイズしてはいかがでしょう。
例)秋田県大仙市
外国語で応対できるスタッフがいないとしても、あいさつなど最低限の言葉は覚えておきたいもの。
外国人向け接客の勉強会を開くのも効果があるでしょう。
留学生に協力してもらえば費用も抑えられ、さらには外国人の視点からアドバイスをもらえるチャンスです。
外国人観光客誘致に力を入れている自治体ではセミナーを開催しているところもあります。
翻訳専用機、スマホやタブレットのアプリを使うのも一つの方法。
何種類もの言語に対応していて、即座に答えが返ってくることが大きな魅力です。最近では翻訳の精度もあがっているので、緊急的には頼りになる手段です。
ただし、機械なのでなかなか思った通りに翻訳されないことも。
機械が翻訳しやすい文を入力するなど、使い方に工夫が必要です。
世界の文化の多様性を理解して、当たり前と思っているサービスを見直すことが新しいビジネスチャンスをつかむきっかけとなり得ます。
外国人には、宗教やライフスタイルによって食べ物に制限がある人々が多くいます。
イスラム教のハラルフードが有名ですよね。
ライフスタイルとしては、ベジタリアン・ヴィーガンと呼ばれる菜食主義が有名です。
こういった人たちが安心して食べられるメニューを用意するのも集客できる売りになります。
日本では一泊二食付き宿泊プランがスタンダードなイメージですが、外国人旅行者には素泊まりを望む人が少なくありません。
宿泊日数が長めの外国人旅行者は、宿の食事だけでなく、いろいろな料理を楽しみたいと思っている傾向にあります。
特に料理が売りのところも多い旅館は、二食付きのままではインバウンド市場に置いて苦戦を強いられそうです。
思い切って素泊まりプランを用意して稼働率を上げている宿もあります。
宿で食事もできる選択肢を残しつつ周りの飲食店を紹介すると喜ばれますし、地域全体の活性化も期待できます。
観光庁も「泊食分離」として推進しているようです、参考にしてください。
参考 外国人旅行客誘致に向けた「泊食分離」の商品展開観光庁消費税を払わずに買い物出来ることは外国人にとっては当然魅力です。
同じような商品を取り扱う場合、免税店であることはアドバンテージになりますね。
デパートやチェーン店でなくとも免税店になることは出来ます。
一定の条件はありますが、所轄の税務署に許可を申請すれば免税販売することが可能です。
良いサービスも商品も、知ってもらわなければ始まりません。
ここでは外国人観光客にアピールし、利用してもらうための方法をご紹介します。
外国人が多く訪れる観光地が近くにある場合、ホテルや案内所にお店のチラシを置いてもらうのは効果的です。
せっかくの情報も手に取ってもらえなければ意味がありません。
多言語対応はもちろん、デザインにも心を砕きたいところ。
店の前まで来た外国人を素通りさせないために看板、POP、ディスプレイでアピールしましょう!
多くの外国人が旅の情報収集に使っていると答えているSNS。
活用して情報や魅力を発信していきましょう。
普通の投稿の他、インフルエンサーへの投稿依頼、有料広告などを併せて行うと効果的。
ただし中国はFacebook・TwitterなどのSNS、動画のYouTubeは使えないので注意が必要。ターゲットが中国であれば独自のSNSの利用も検討しよう
自身の外国人向けwebサイトを整えましょう。
もし現在webサイトがあったとしても、単に翻訳すればいいわけではありません。
外国人観光客向けに日本の観光情報を発信しているポータルサイトや口コミサイトへ登録することも検討しましょう。