農地でグランピング施設やキャンプ場の開業は可能?農地転用にかかる費用や期間は?司法書士費用の相場や転用可能な条件、申請書類まとめ

事業再構築補助金などを利用し、新しく事業を始めたり、事業の幅を広げたいと考えている事業主さんは多いと思いますが、中でも人気の高いのがグランピング施設やキャンプ場の開業です。

数年前からのアウトドアブームに加え、コロナ感染対策や、コロナ禍での人々の意識の変化から、旅行をする際にこれまでのようなホテルや旅館に宿泊するよりも、アウトドア寄りのグランピング施設を選ぶという傾向も増えていて、グランピングの需要の高まりはこれからも続く見込みです。

そんな中、グランピングやキャンプに適した場所を探す事業者さんも増え、なかなか理想の土地が見つからないために二の足を踏んでいる方も多いのでは。

こんなに空き地や荒れ地がたくさんあるのに、どうして・・・?という場合に、そこが農地だからということが多々あります。

そこで今回は、「たまたまいい場所に程よい価格で手に入りそうな土地が見つかったけど、農地だからグランピングはできないと言われた」「知り合いから農地を安く譲ってもらえそうだけど、そこでキャンプ場やグランピング施設ができるかな?」そんなお悩みや疑問に答えていきたいと思います!

そもそも農地って何?

農地、というと、ぱっと思い浮かぶのは「農業をする土地」ですよね。

例えば、一般家庭の広い敷地の一角で家庭菜園を営んでいる場合、これは「農地」でしょうか?

不動産屋さんなど土地売買に詳しい人にとっては常識かもしれませんが、一般人だとそもそも「農地」ってなんだかわからない・・・ですよね。

今回のテーマである「農地」は、農地法で「耕作の目的に供される土地」と定義されていて、現状畑や田んぼなどとして使われている土地はもちろん、耕作をしようと思えばすぐに使える状態の土地のことも「農地」というそう。

なので、一般家庭の個人所有の宅地の一角で行っている家庭菜園は、一時的なものだったり家屋に付随した土地なので、「農地ではない」ということになります。

また、農地の中には市町村の農業委員会によって定められた農業振興地域「農用地区域」という土地の区分があり、「特に農業をするのに適している土地で、農作物を作ること以外に使ってはいけない土地」と定められた場所があります。

日本は古来から農業国ですが、土地開発などや環境の変化によって徐々に農家の数も減り、大切な日本の基盤である農業が衰退してしまうことが危惧されているという背景があり、農地として区分され指定されている土地は保護していかなくてはならない、ということなのですね。

空き地だと思って目をつけた場所が実は農地、ということは結構あるようなので、注意が必要ですね。

農地かどうかの調べ方

特定の土地が農地かどうかを調べるには、市役所の農政課などに問い合わせるのが一般的ですが、とりあえず手軽に調べられるのが「全国農地ナビ」というサイトです。

地図から都道府県、市町村、と選んでいくと、その地域で農地に指定されている場所が青丸でマップに現れます。

改めて、日本にはこんなに農地があるのね!と驚くほどに青い丸がたくさんある地域があるのが分かります。


(出典:alis-ac.jp

また、市街地のすぐ横で「どうしてこんなに畑が広がっているんだろう・・・」と今まで思っていた場所が、実は農地だったというのもとてもわかりやすいです。


(出典:alis-ac.jp

農地をキャンプ場やグランピング施設にできるか

ではここで本題ですが、こんなにたくさんある農地、キャンプ場やグランピング施設にすることはできるのでしょうか?

先ほどの農地の説明からなんとなく察することができますが・・・、答えは「そのままではできない」「かなり難しい」の2種類です。

もう少し詳しく言うと、

「そのままではできない」・・・農地を農地ではない土地区分に変える「農地転用」の手続き申請をし、認められればできる

「かなり難しい」・・・農地としてしか使ってはいけない場所で、基本的には農地転用ができないけれど、認められる場合もある

となります。

農地転用が難しい土地

農地として指定されていて、かつ農地転用が難しい土地は、以下の3つです。

  • 農業振興地域内にあり、かつ農用地区域内の農地:農地の中でも特に高い生産力があり、宅地や農業以外の用途に変えるのを厳しく法律で制限されている農地
  • 甲種農地:市街化調整区域内の農地で、特に良好な営農条件を備えている農地
  • 第1種農地:約10ヘクタール以上に広がる集団的な農地で、農業公共対象農地であり、生産力の高い農地

これらの土地の見分け方は、先ほどの全国農地ナビの、青丸のうちのひとつをクリックすることで大抵わかります。

青丸をクリックすると赤丸に変わり・・・


(出典:alis-ac.jp

画面下に、その土地の区分などが表示されます。


(出典:alis-ac.jp

この土地は「農業振興地域内・農用地区域内」となっているため、農地転用はかなりハードルが高いです。

こういう土地をどうしても農地転用する場合にはまず農業委員会に申請して農業振興地域から外してもらう必要があり、そのための条件が厳しい上に、期間も1年以上かかる場合もあります。

それでも、申請自体は可能なのでどうしても!という場合にはチャレンジしてみることは可能です。

上記のような農業振興地域内・農用地区域内の土地は不動産用語で「青地」と呼ばれ、農業振興地域内でも農用地区域外の土地は「白地」と呼ばれて、白地であれば農業振興地域から除外してもらう必要はありません。

ただし、周囲を青地で囲まれていて、何かの手違いで白地に登録してある土地などは、申請が通らない場合もあります。

農地転用できる土地

農地転用をすればグランピング施設にすることのできる可能性のある農地は、以下になります。

  • 第2種農地:鉄道の駅が500メートル以内にあるなど、近い未来に市街地化が見込まれる農地や、農家ではなく個人で耕しているような小集団の農地
  • 第3種農地:都市計画区域内の用途指定のある区域内にある農地や、市街地化への見込みが著しい区域にある農地

ざっくり言うと、より農村地に近いけど比較的市街地化しそうな場所にあるのが第2種、さらに都市部に近く、市街地化しそうな場所にあるのが第3種、と言う感じですね。

どちらも農地転用をすることは可能ですが、第2種の農地を転用する場合に「代替えできない説明(代替性)」が求められます。

代替えできない説明というのは、「この土地じゃなくて、近くのこっちの土地ではダメなの?」という質問に「いや、どうしてもこの土地でなければダメなんです!」という説得力のある説明のことです。

国や市町村としては、農地をできるだけ残したいという気持ちがあるので、その分第2種農地を転用する方が難しいと言えます。

第3種農地は、基本的に転用が可能と言われていて、以下の4つの条件のうちのどれかひとつでも満たしている農地です。

  1. 上下水道やガス管のうち、2種類以上が前面道路に埋設されていて、500m以内に2つ以上の教育・医療その他公共施設がある
  2. 駅・官公庁・インターチェンジから300m以内
  3. 街区面積に占める40%以上の区画にある
  4. 用途地域が定められている

ただ、4の「用途地域」については、住宅専用地域、工業専用地域など「専用」と定められている用途地域では宿泊事業を行うことはできないこと、また、市街化調整区域では、建物の建築が原則できないなど制限があるので、グランピング施設を目的とする場合には注意が必要です。

第2種農地とか第3種農地といった区分はやはり市町村の農政課に問い合わせてみる必要がありますが、先ほどの「全国農地ナビ」でも、農業振興地域内・農用地区域外だったり、農業振興地域外であったりすると見込みアリと予測できます。


(出典:alis-ac.jp


(出典:alis-ac.jp

農業振興地域内・農用地区域外だと第2種の可能性があり、農業振興地域外だと第3種の可能性がある、といった具合です。

農地転用の申請手続き

購入または借地する土地が農地転用でき、グランピング施設にすることができる可能性が出てきたら、農地転用の手続きをします。

土地の持ち主さんが農地を農地ではない土地に変える手続きをする場合(農地法4条)と、購入者が農地転用手続きをする場合(農地法5条)がありますが、基本的には同様の流れです。

必要な書類は以下になります。

  • 申請書(4条または5条)
  • 住民票
  • 登記簿謄本
  • 公図
  • 利用計画図(企業による) など。

申請には2パターンあり、都市計画の区分でその土地がどの区域に該当するかによって異なります。

農地が市街化区域内にある場合

転用したい農地が市街化区域内にある場合、各市町村が指定する提出書類を農業委員会に提出します。

毎月提出締切日があるので、各農業委員会が設定する締切日を把握して間に合うように届出をしましょう(遅れると審査の開始が1ヶ月ずれます)。

締切日から1週間~10日ほどで返答が来ます。

農地が市街化調整区域にある場合

転用したい農地が市街化調整区域にある場合は、都道府県知事からの許可が必要となるため、より時間がかかります。

許可申請は農業委員会を経由して都道府県へ提出されるので、提出先は同じく農業委員会ですが、締め切りから返答まで1ヶ月半ほどかかります。

届出をしてから許可が下りるまでにかかる期間は、およそ6週間と言われています。

農地転用の申請にかかる費用

農地転用の申請自体は無料ですが、各種書類を取り寄せたりするのに手数料がかかります。

また、手続きには専門書類も多く個人で行うにはかなりハードルが高いため、司法書士さんにお願いしてやってもらう人が多いのが現状です。

司法書士さんにお願いする場合、届出の際と許可の際にそれぞれ費用がかかり、届出の場合は3万円~5万円程度、許可の場合は6万円~15万円程度が相場と言われていて、合計すると9万円〜20万円ほどになります。

とはいえ、ただでさえ手続きには時間がかかると言われている農地転用、何度も申請を繰り返すのも大変だし、プロに頼んでやってもらうのが一番・・・という気がします。

司法書士さんを選ぶ際には、値段だけに囚われず、農地転用の手続きの実績があるところをなるべく選ぶようにしましょう。

地目の変更も忘れずに

無事に農地転用の許可が下りたら、ほっとする前にもうひとつ土地に関してしなくてはならない手続きがあります。

それは、地目の変更

地目というのは、登記簿に記載されているその土地の目的(名目)で、「学校用地」「宅地」などの区分けがしてあります。

農地の場合は地目が「田」「畑」になっている場合が多いので、これをキャンプ場などで使われる「山林」「原野」「雑種地」などに変更をしないと、農地と同じように建築や運営などへの制限がかかってしまいます。

地目を変えるには、以下の2つの手続きが必要になります。

農地転用事実確認願

農地の転用が実際に完了したことを、市の農業委員会に申請します。

申請が受理されると、市の担当者が実際に現地を確認し、認められれば証明証が発行されます。

地目変更登記

農地転用事実確認願で発行された証明証を添付し、法務局で地目変更登記の申請をします。

これが完了すれば、晴れてその土地は全く農地ではなくなります。


というわけで、今回は農地でグランピング施設の開業は可能なのか、農地転用にかかる費用や期間、司法書士費用の相場や転用可能な条件、申請書類などについてまとめました。

これからグランピング事業を始めようと思っている方や、農地の購入を検討している方、参考にしていただけたら幸いです。

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