グランピング施設の計画からオープンまでの流れ【2】行政への許可申請まとめ(旅行業・飲食店業など)

前回、「グランピング施設の計画からオープンまでの流れ【1】」で、土地選びのポイントや注意点についてまとめました。

今回は、グランピング施設の開業の計画〜オープンまでの流れ【2】として、土地が見つかってグランピング施設をオープンするまでの間に、最低限行わなくてはならない許可申請についてまとめました。

1.旅館業の申請

グランピング施設を運営し、テントやトレーラーハウスに寝具などをセットして宿泊のサービスを提供する場合、旅館業の申請が必須になります。

旅館業には、その形態によって4種類あります:

旅館・ホテル営業:和室または洋室で、1部屋7㎡以上
簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業
下宿営業:1ヶ月以上の期間を単位にして宿泊

グランピング施設は、ほとんどの場合、2の簡易宿所営業で申請することになりますが、宿泊棟の数によっては旅館・ホテル営業の許可取得を勧められる場合もあるようです。

簡易宿所営業の許可申請をする時期

一般的に、簡易宿所営業の申請を行なってから、実際に認可されるまで、1ヶ月ほどかかります。

そのため、自治体によって異なりますが「事業開始の1ヶ月前まで」に申請を行うよう期限を定めているところもあります。

ただ、実際には書類や設備の不備などでさらに処理に時間がかかる場合も想定されるため、半年前くらいから準備をしていくのが安全です。

許可申請には敷地面積や客室面積、浴室の数など細かく答える必要があるので、しっかり必要な情報を揃えながら効率的に進めていきましょう。

簡易宿所営業の許可に必要な条件

簡易宿所営業の許可申請をするには、許可が下りるために施設の設備を整える必要があります。

条件はさほど厳しくありません。

  1. 客室床面積1人当たり3.3㎡以上
  2. 宿泊者の需要に対して適当な規模や数の入浴設備やトイレ
  3. 適当な換気、採光、照明、防湿、排水の設備

1に関しては、かなりハードルが低いですが、2と3に関してはある程度の設備投資が必要ですね。

ただ、「トイレが少ない」「排水口の流れが悪い」「カビがひどい」などの設備・管理の不備は後々クレームや悪評価に繋がり、施設自体の価値を下げてしまうことになる恐れがあるので、条件を満たす以上にお客さん目線でしっかりと整備したいところです。

この条件は、法令によって定められているものですが、自治体によっては例えば「近隣に入浴施設がある場合は免除」などの追加条件がある場合もあります。

旅館業法の許可申請は、都道府県知事宛にされ、直接許可を出すのは知事ですが、窓口は県または市の保健所が担っています、

詳しくは施設開業予定の保健所窓口へ問い合わせてみましょう。

玄関帳場(フロント)の設置について

平成29年以前は、宿泊客を迎える施設には玄関帳場(フロント)が必須と定められていました。

それまでは簡易宿所であっても、チェックイン・チェックアウトの手続きをしたり、人の出入りを管理したり、緊急事態に対応するために必ずフロントを置いて、フロント担当の人が対応できるようにしなくてはいけませんでした。

そのため、宿泊棟のテントなどとは別に、管理棟を設けるなど設備投資費用の増加にもつながっていました。

しかし、簡易宿所営業については、玄関帳場(フロント)は必ずしも必須ではないと平成29年に法令が変わり、国の法令では玄関帳場の設置義務が無いことになっています。

と言っても、実際に旅館業法の条例は都道府県や市町村別でも異なり、自治体によっては「簡易宿所営業であってもフロントの設置が必須」となっているところも残っています

簡易宿所営業の許可申請に必要な項目と書類(例)

簡易宿所営業の許可申請に必要な項目や書類も、各都道府県、自治体によって若干異なりますが、「どういったものが必要になるのか」の参考になるよう、グランピング施設候補地としても人気の高い長野県の場合を例にしてみてみましょう。

【申請書に記載すること①】

  • 住所(法人の場合は、主たる事務所の所在地)
  • 電話
  • 氏名(法人の場合、その名称及び代表者名)
  • 生年月日(法人の場合は除く)

まず、住所や氏名(法人名)など基本的な情報を記入します。

【申請書に記載すること②】

  1. 営業施設の所在地・電話番号
  2. 営業施設の名称
  3. 営業の種別
    (グランピング施設の場合、一般的に簡易宿所営業
  4. 営業施設が省令第5条第1項に該当するときはその旨及び特定の季節又は一時的に営業するときはその利用期間
    (第5条第1項:宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるときには宿泊を拒否できる)
  5. 営業者が法第3条第2項各号に該当することの有無及び該当するときはその内容
    (第3条第2項:相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした第三条第一項の許可は、その相続人に対してしたものとみなす)
  6. 営業施設の構造設備の概要(別紙:次項参照)
  7. 備考:法第3条第1項の許可を受けて旅館業を営む者から当該旅館業を譲り受けた者は、上記3、4及び6の事項のうち変更がないものの記載を省略することができる。

【申請書に記載すること③】

上記の記載することのうちの6にあたる、「営業施設の構造設備の概要」を記載します。

  1. 敷地の面積 ○㎡
  2. 建物の総床面積 ○㎡
  3. 建物の構造(○階建 ○造)
  4. 建築の時期 ○年
  5. 客室数及び定員(寝台の有無 / 室面積 / 宿泊床面積 / 室数 / 定員)
  6. 施設の一般構造(換気、採光、照明及び防湿方法)
    浴室:浴室の種類 / 浴槽数 / 構造 / 循環ろ過装置の有無・方式・系統数
    洗面所:階 / 箇所 / 数 / 水栓数
    便所:階 / 箇所 / 数 / 大便器個数 / 小便器個数
    飲料水:種別 / 貯水槽の有無

【添付書類】

  1. 申請者が法人の場合は、定款又は寄付行為の写し
  2. 建物配置図及び各階平面図(縮尺100分の1以上)
  3. 施設周辺200メートル以内の主な地物(学校等の敷地がおおむね100メートル以内の距離にあるときは、その距離)を明示した見取図
  4. 建築・用途変更の検査済証の写し
  5. 消防法令適合通知書の写し(※消防法令適合通知書の申請については、最寄りの消防署に問い合わせ)
  6. 申請者が法人の場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)(申請日前6か月以内に発行されたもの)
  7. 使用水が水道法で定める水道水以外の場合は、水質検査書の写し
  8. 自然公園内の場合は、宿舎事業許(認)可書、工作物新築等許可書の写し

3,に関しては、学校や博物館、図書館、児童福祉施設など教育機関やそれに準ずる施設が100m以内にある場合に、保健所が周囲の環境へ悪影響がないかどうか、教育機関に聞き取りを行う場合があります。

その聞き取り調査に時間がかかって施設オープンに時間がかかったり、最悪施設自体がオープンできなくなったりする場合もあるので、可能であれば近くに教育機関がある場所は避けたほうが無難です。

5.の消防法令適合通知書は、管轄地域の消防署に問い合わせた後、その都道府県で定められた消防法令適合通知書交付申請書などを消防署に持参して交付してもらいます。

消防法令適合通知書交付申請書に必要な書類例

  1. 消防法令適合通知書交付申請書
  2. 建物の案内図、敷地配置図
  3. 建物の平面図、立面図
  4. 消防用設備等設置状況図

交付申請後、実際に消防署の立ち合いで検査が行われ、書類や設備に不備がある場合には追加の資料提出や設備の改善などが必要になります。

ここでも少し時間がかかる場合があるので、施設が完成に近づいたら早めに申請準備と申請を行なっておきたいですね。

7.の水質検査は、予定地管轄の食品衛生協会などに連絡して実施してもらいます。

旅館業(簡易宿所営業)の許可申請費用は?

旅館業の許可申請費用は、都道府県によって定められていますが、おおむね¥23,000ほどとなっています。

2.飲食店業の申請

グランピング施設と言ってもいろいろな形態があり、中には「持ち込みBBQ・素泊まりのみ」のスタイルで営業しているところもありますよね。

その場合は、旅館業の許可を取得していれば大丈夫です。

しかし、「食材を提供してBBQを楽しんでもらう」「朝食を提供する」など、未調理・調理済み関わらず、食品をお客さんに提供して食べてもらうサービスを展開するためには、飲食店業の許可申請が必要になります。

飲食店業の申請は、旅行業の申請窓口と同じ保健所で受け付けていて、保健所によっては旅館業法の申請と同時に案内を行なっている場合もあります。

こちらも、都道府県によっても異なりますが、一般的には以下のようになっています。
(参照:山梨県の場合)

  1. 食品営業許可申請書
  2. 厨房の平面図
  3. 食品衛生責任者の選任届
  4. 施設付近の地図
  5. 水道水以外の水を使用する場合は水質検査成績書
  6. 食品営業許可申請手数料(各都道府県の食品衛生法施行条例で定める額)

3.の食品衛生責任者は、その施設で働く人が資格を取得しなければならず、他施設との兼任が認められません。

食品衛生責任者の資格は、自治体などで行われている講習(食品衛生学2時間30分 / 公衆衛生学30分 / 食品衛生法3時間)を受講すれば取得することができ(受講料およそ1万円)、一般的に各都道府県の各地で月に1回は開催されています。

ただ、定員が決まっていて、予定日の3ヶ月前ほどから予約が開始してもすぐに定員に達して受付終了となってしまう場合もあるので、既存の従業員から選任するする場合には時間に余裕を持って申し込みを。

その他、飲食の一環としてアルコールを提供する場合は不要ですが、缶ビールなどを売店で販売する場合には「酒類販売業免許」も必要となります。

また、希望する営業形態によっては、「食肉販売業の許可」なども併せて必要になる可能性もあるので、保健所で詳しく説明を聞いてみることをお勧めします。

3.防火対象物使用開始届の提出

BBQ機材や焚き火台、ファイヤーピットなどを施設で使用する場合には、防火対象物使用開始届の提出も必要です。

こちらも都道府県や市町村によって申請届フォームがあるので、記入して管轄の消防署に持参します。

添付書類も自治体によってまちまちですが、付近見取図(案内図)・配置図・各階平面図・立面図・仕様書及び室内仕上表並びに消防用設備の設計図書(配置図を含む)などが必要になる場合もあります。

このあたりは旅館業の申請時にも作っているはずなので、大丈夫そうですね。


以上、グランピング施設の開業の計画〜オープンまでの流れ【2】として、グランピング施設をオープンするまでの間に、最低限行わなくてはならない許可申請についてまとめました。

参考にして頂けたら幸いです。

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