アウトドアブーム、コロナ禍での休日の過ごし方、事業再構築補助金など、複数の要因が重なって急成長を遂げているグランピング業界。
実際、事業再構築補助金で最も増えた業種(施設)はグランピングと焼肉屋さんという統計が出ています。
全国に新しくオープンするグランピング施設が増える中、実際の経営となると「思ったほど収益が出ていない」「予約が入らない」といった問題に直面している施設も少なくないようです。
そこで今回は、様々な施設の設備やサービス、口コミなどを見て筆者が思う「グランピング運営で失敗しないために注意したい10のポイント」をまとめました。
あくまで客観的に見て思った個人的意見ではありますが、参考になる点があればと思います!
事業再構築補助金など、補助金の申請には多大な労力がかかるのはもちろんですが、実際にグランピング施設を開業まで漕ぎ着けるには資金・計画・工事など、多くの予算と時間、労働力を必要とします。
助成金が絡んでいる場合は、完成の期日が決まっていたりして、ストレスも大きいですよね。
ただ、グランピング施設がどんどん増えているここ数年、グランピング施設の開業がゴールではなく、そこからが本当のスタートです。
そこで、今までに多くのグランピング施設のサービス内容や設備、口コミなどを見てきた筆者が思う「グランピング運営に成功するために注意したい10のポイント」をまとめてみました。
グランピングがまだ認知され始めた頃は、「アウトドアなのにホテル並みに快適」とか「ラグジュアリー」といったイメージが主流でした。
ただ、あまりにも「快適」を前面に打ち出しても、自然の多い場所でテントを利用した宿泊となると、ある程度は虫がいたり、温度管理が難しかったりします。
そうすると、「これならやっぱりホテルの方が快適だよね!」という、お客さんの不満に繋がりかねず、クレームとなる場合もあります。
実際、口コミを見ていると、「この値段ならホテルに泊まった方がいい」といった意見が散見し、そういう意見の人は低い評価をつける傾向があるように見受けられます。
グランピング泊に「快適さ」を目的のナンバーワンに求める利用者にとっては、快適さが最も重要なので、がっかりしてしまう気持ちも分からなくはありません。
例えば虫がいたり、トイレまで少し歩かなくてはならなかったり、ホテルほどアメニティがそろっていなかったり・・・、それでも「都会では絶対に見ることができない満点の星空が見える」「波の音を聴きながら目の前の夕陽をながめられる」「昆虫採集やトレッキングなど自然と触れ合える」「焚き火のゆらぎに癒される」など、グランピングだからこそいいところをアピールするのが大事だと思います。
その上で、できるだけ快適に過ごせるよう工夫をしてあることが伝われば、利用者にとっても不満という気持ちにはなりにくいのではないでしょうか。
グランピングは、ホテルと比べるものではない、ということを利用者側だけでなく、運営側も意識するといいと思います。
様々な施設の口コミを見ていて思うのは、やはり最終的に評価を左右するのは「お客様対応」なのだということ。
どんなに不手際や不具合があっても、その都度しっかりと誠心誠意対応したことがちゃんと利用者に伝わっていれば、ひどいクレームに繋がることも防ぐことができるのではないかと思います。
むしろ、「こんなことがあったけど、このように対応してもらえてよかった」と、良い評価に繋がる場合が多いです。
もちろん、無理難題を言う利用者の言いなりになるというわけではなく、できないことはできない、でもその代わりにこれができる、とケースに応じた対応力や接客能力が求められます。
それはやはり、キャンプと違って、ゲストルームや設備、食事を提供するサービス業、という観点から、接客についてしっかりと講習を受けるなりして勉強しておいた方がいい部分だと思います。
(キャンプ場でも、感じの悪い対応では客足が遠のくくらいですから・・・)
挨拶や受け答え、行動の仕方(面倒臭そうに動くなど)はもちろん、施設の設備やサービスの内容、不測の事態の場合の対処法など、定期的にスタッフを集めて講習を行い、ブラッシュアップすることをお勧めします。
SNSや口コミ評価に対する返信なども、お客様対応として対応マニュアルなど勉強した人物が行うのが望ましいです。
稀に、低評価の辛口意見に対して喧嘩腰で反応している書き込みを見かけることがありますが、施設の印象を大きく左右することになるため、注意が必要です(無理難題を言うクレームに対して毅然とした態度で接する、ということとは区別して)。
グランピング施設が日本にでき始めた当初は、キャンプ場と同じように「共用シャワー」「共用トイレ」が主流でした。
しかし、そもそもグランピングを利用する客層には「キャンプや自然には憧れるけど、苦手」という人が多く、その理由のひとつが「共有のトイレやシャワーが苦手」ということだと推測されます(筆者も公衆トイレが苦手なので・・・)。
大きな温浴施設の大浴場ならまだしも、屋外にあるシャワー棟で個室のシャワー、誰かが使った後の濡れた床や、排水溝の髪の毛など、ついつい不快感を覚える人も多いのでは。
また、雨の日や寒い時期、夜間など、宿泊棟を出て外の道を歩き、トイレに行かなくてはならないというのは、ひとりでも億劫なのに小さな子供連れともなると大変です。
そうすると、「トイレやシャワーは宿泊棟のすぐ横に個別であったほうがいい」と感じる人が増えるのは当然といえば当然です。
徐々に「グランピングのトイレやシャワーは個別に」という施設が増えてくると、ますます「共用シャワー」「共用トイレ」は不利になってきました。
設備投資にお金がかかったり、許可申請が必要だったりと、ハードルが上がる部分ではありますが、その分掃除はチェックアウト後に行えばいいとか、メリットもあるかと思うので、検討してみる価値はありそうです。
近くに温浴施設がある場合は、お風呂はそちらで入ってもらって、共用のシャワー棟、さらに個別でトイレがあるといいですね。
グランピング施設への飲食物の持ち込みについては、それぞれの施設で規定を設けていたり、OKにしていたりと、様々です。
BBQで食べる食材も持ち込みOKとしているところもあれば、保健衛生の観点から「加熱処理が必要なものの持ち込みはNG」としているところ、「飲み物のみOK」のところ、など。
稀に「飲食物の持ち込みは一切NG、持ち込む場合は”持ち込み料”がかかります」と厳しく制限しているところもあります。
施設内で提供する食事や、販売している飲み物だけで過ごしてくれた方が、収益的にも、またゴミを処理する手間など考えても確かに理解はできるところですが、一切NGとなるとその分、満足のいく食事内容や、飲み物のバリエーションが求められてしまうところ。
持込OKとしていても、その場で販売していれば買う人も多いでしょうし、近くにコンビニやスーパーもないような山奥ならなおさら、あらかじめ用意して持参することを規制してしまうと、逆に「これがない、あれがない」とクレームになりかねません。
生の肉や魚などは衛生面からNGとしても、そのほかについてはある程度許容するか、NGとする場合には利用者が納得できるような説明を添えるといいかと思います(オールインクルーシブにして現地で飲食に困らないよう用意する、選べるメニュー体系で過不足なく提供できる、ゴミの観点など)。
近隣のスーパーや道の駅などで買い物をする人が増えれば、地域の活性化にもつながり、施設自体が地域に根付いた愛される場所になると、さらにいいですね。
ペットと一緒に旅行というと少し前までは珍しく、今でも普通のホテルではペットと利用できるところがかなり限定されています。
確かに、大きな建物の中で、部屋を区切って利用するタイプの宿泊施設では、エントランスや廊下、ロビーなど、多くのお客さんの出入りがあるため、ペット連れとそうでない人を区別することが困難なことが理解できます。
一方、宿泊棟がひとつひとつ屋外で別個になっている場合がほとんどのグランピング施設では、ペットと利用できるゲストルームを用意している施設が増え、利用者も増えているのが現状です。
大切な家族の一員のペット、お留守番させるより、一緒に宿泊して自然を楽しめるのなら、お出かけしたいな、と思う愛犬家さんが多いということをふまえ、施設の一部だけでもペットが利用できるお部屋を作るのがおすすめです。
逆にいうと、全てペット可にしてしまうと利用客層が限られてしまうため、ペットと一緒でも、そうでなくても、安心して利用できるようにするのがいいです。
施設によっては、ペットOKのゲストルームの横にドッグランを整備したり、サイトをまるごと柵で囲ったりしている場所もあり、ゲージや足洗い場を用意しているなど「対ペットのサービス」に力を入れている場所も多いです。
ただ、施設オーナーやスタッフが「犬が苦手」という場合には、どうしてもサービスに無理が出てしまう可能性があるので、そういう場合は別の付加価値を見つける方向で検討してみてください。
これまで、旅行の中での宿泊の役割は、「どこかに観光に行って宿泊」という感じでした。
ホテルに求められることは、まずはゆっくりと1日の疲れを取ることができることで、ホテルの中でのアクティビティというのは特に気にしていない人も多いのではないでしょうか。
かたやグランピングは、「グランピングをしにいくところ」で、宿泊だけが目的ではなく、チェックインからチェックアウトまで、そこでどう過ごすか、が大きなポイントになります。
自然豊かな場所にあるグランピング施設の場合、「大自然を満喫して」というのは簡単ですが、初めて来た場所で、元々アウトドア派でもない利用者にしてみたら、「どうやって満喫したらいいのか・・・」となってしまいます。
なので、山の中のグランピング施設であればトラッキングや散策のコースを提案してあげたり、レンタサイクルを用意したり、その土地で採れる山菜ツアーや昆虫採集ツアーを開催したり、天体望遠鏡やフリスビーなど備品を揃えたり・・・、「とりあえず行ってみたら、楽しい体験ができそうだな」と思ってもらえることがポイント。
もちろん、「何もせずボーッとしたい」という人もいるでしょうし、ニーズは様々ですが、いつでも提案できるアクティビティを用意して予約サイトなどでもちゃんと提示してあると、他の施設との差異化にも繋がるかと思います。
スタッフも率先して楽しさを共有できるよう、日々アクティビティについて考えたり、講習したりして、「この施設でどんな楽しいことができるかな」を増やせたらいいですね。
近隣のおすすめ観光スポットへのマップなどと合わせて、「こんなにいろいろ楽しめるなら、2泊か3泊したいね!」なんて思ってもらえる施設目指しましょう!
アウトドアで宿泊するなら、やっぱりやりたいのが「焚き火」。
揺れる炎を眺めているだけで、なぜか心が穏やかになり、日々の喧騒を忘れさせてくれます。
グランピング施設によっては、ファイファーピットが施設中央に設置してあって、利用者が自由に使える憩いの場のようにしてあったりします。
ただ、できることならそれぞれの宿泊等にひとつづつ、焚き火ができるスペースが欲しいところ。
夜、消灯前のひととき、家族や友達など気を使わない相手とだけ、またはひとりで、焚き火を眺めたり木を足したり、そんな時間を過ごせるのって、アウトドア泊の醍醐味ですよね。
揺れる炎を眺めることでリラックス効果や幸福感が高まって、結果的に「いい滞在だった」と思ってもらえるならなお良し。
普段は燃える火なんて見たことがない、なんて子供たちにも、視覚と嗅覚、そして聴覚と感覚を刺激するいい思い出になりそうです。
施設の運営の中で、継続的にかかる固定費を減らすことも重要です。例えば・・・
電気代
グランピングの宿泊棟として採用されることの多いドームテント、その理由のひとつにテントという簡易的な構造ながら、機密性が高く、オプションで断熱材を追加することでエアコンなどの空調効率を上げることができる、ということが挙げられます。
年間通じてグランピング施設を利用してもらうためには、エアコンの導入は必須といっても過言ではありませんが、その分電気代がかかってしまうので、床や壁部分の断熱材はしっかりと施工の段階で入れておくことをお勧めします。
初期投資がかかっても、長い目で見ると節約になるでしょう。
宿泊棟の種類
グランピングでの宿泊棟というと、初期はコットンテントを採用する施設が多くありました。
グランピングといえば、ガーランドを飾った三角のコットンテント、というイメージが定着しましたよね。
初期投資も少なくて済むコットンテントですが、日本のように湿気の多い場所で常設していると、どうしてもカビが生えてしまったりして定期的に買い替えなくてはなりません。
また、通気性のあるコットンテントはエアコンの効率も下がってしまうため、電気代もかさんでしまいます。
そのため、徐々に長く使えて丈夫なPVCやターポリン素材のドームテントがグランピングの主流となっている傾向があります。
人件費
グランピングの運営に関わる人材を社員として多く抱えてしまうと、繁忙期はともかく、閑散期にも固定費がかかり続けるために、経営を圧迫してしまいます。
施設を管理するマネージャーや経理など、主要な立場の人材以外はアルバイトやパートを雇用してうまくシフト管理をするなどし、収支をコントロールするのも大切です。
グランピングでは、食事付きのプランを選んで「食事も楽しみ!」という利用者も多いですよね。
アウトドアを感じられる食事ということで、BBQの夕食プランを用意している施設はとても多いですが、一昔前のBBQのイメージ(薄切り肉やソーセージ、野菜を焼いて焼肉のタレで食べ、最後は焼きそば)のメニューでは物足りなく感じられる場合が多いです。
グランピングの料金プランは全体的に高額に設定されていることが多く、それだけの金額を支払うのに家庭で安く用意できるような食材だと、「割りに合わない」と感じるのです。
素泊まりのプランも用意してある場合はなおさら、素泊まりと食事付きの差額=食事内容となるため、差額が大きければ大きいほど食事に対する期待も高くなります。
上質のお肉を使う、オリジナリティのある味付けをする、地産地消の新鮮な野菜を使用する、など、利用者が「良い食材を美味しく食べられた」と実感できるよう工夫することをお勧めします。
お肉をあらかじめスパイスでマリネしておいたり、アヒージョやホットサンド、ダッチオーブンなど、いわゆるBBQよりもちょっと手の込んだ料理が加熱するだけで完成する、みたいなアイデアも色々と取り入れて、「アウトドアグルメってこんなに色々楽しめるんだね!」と思ってもらえるといいですね。
また、大人は大人で楽しめる味付けにする一方、子供向けのメニューは別で用意してあげるなどのサービスがあると、家族全員の満足度も上がって◎。
グランピングが大ブームになって以来、日本中に様々なグランピング施設がオープンしています。
利用する側も、行きたい場所(県や地域)を選ぶだけでは絞り込みができないほどの数のグランピング施設がある現在、「この施設にしよう」の決め手があることはとても重要です。
などなど・・・
いくつかの施設を見比べたときに、「あ、ここにはこれがあるからいいね」と思うポイントは人それぞれなので、他の施設と同じような点ではなくて、「うちの施設にはこれがある」をアピールできるといいですね!
以上、様々な施設の設備やサービス、口コミなどを見て筆者が思う「グランピング運営で失敗しないために注意したい10のポイント」をまとめました。
あくまで個人的見解ではありますが、参考にしていただけると幸いです!