ここ数年続いているアウトドアブーム。おひとりさまキャンパーや女子キャンパーの増加、さらには冬ならではのキャンプの楽しみ方も浸透してきて、まだまだ続きそうな気配を見せています。
キャンプ場はさぞかし儲かっているだろう…と安易に考えがちですが、実際のところキャンプ場経営は儲かるのでしょうか?
キャンプ場経営で見込める収入と掛かる費用、差引は利益なのか?損失なのか?具体的な収支について調べてみました。
まずは、キャンプ場の収入源にはどんな種類があるのでしょうか見ていきます。
提供するサービスによりさまざまな収入が見込めます。
キャンプ場の収入でまず思い浮かぶのは、テントサイト、オートサイトの利用料ですよね。
利用料金の全国平均は 4,314 円(2018年 日本オートキャンプ協会調べ)
公的キャンプ場から民間のキャンプ場まで、2、3千円~1万円超えまで結構幅があるようです。
電源付き、流し台付きなどの高規格サイトであれば、利用料は高めに設定されています。
また、週末、繁忙期(ゴールデンウイークやお盆)はそれぞれ平日よりも高い料金になるようです。
また、キャンピングカーサイトは、通常オートサイトよりも広めの区画で電源付のため、料金は高めの設定です。
テントサイト利用料の他に、ロッジやバンガロー、コテージ、トレーラーハウス、グランピングテントなど施設側で用意した宿泊施設の利用料金があります。
設備の大きさ、内容によって本当に幅があり、バンガローでは4名サイズで1泊5、6千円数万円程度。高級グランピングテントになると数万円とリゾートホテル並みの料金設定のところも。
オートサイト利用でない場合、別途駐車料を設定しているキャンプ場が多いようです。
一律の施設もありますが、多くはバイク~マイクロバスまで、大きさに応じた価格設定がされています。
一人当たり入場料や施設利用料という名目で料金がかかるところもあります。
サイト利用料に含まれる施設と、別途課される施設があるようです。
また、1サイトあたり〇人までは含まれるが、それを超えると一人当たりいくら、というところも。
数百円から数千円と施設によって幅があります。
テント、シュラフ、インナーマットなどの宿泊関連アイテム。
バーベキューコンロやダッジオーブン、トングや食器などの調理関連アイテム。
チェアー、ランタン、延長電源コードなど実に様々なレンタル品を用意している施設が増えました。
ここ最近は、各キャンプ場のレンタル品が充実してきたこともあり、持っている人もレンタルを活用する傾向にあります。
手ぶらキャンプを希望する人も増えているため、収入として大きい割合が見込める項目です。
手ぶら志向が増える中、キャンプ場の売店は収益の大きい部分を占める可能性があります。
また忘れ物をしても現地で調達できるとなれば、安心して利用できるためアドバンテージになります。
木炭や薪、ホワイトガソリンなどの燃料、BBQ食材や調味料、ビールやお菓子にアイスクリームなどの食料品、ウエアやビーチサンダル、サングラスなどの衣料品、みんなで遊べるシャボン玉や花火などのおもちゃなど、痒い所に手が届く品ぞろえを心掛ければ売上も期待できます。
レンタル品と同じ焚き火台やスモーカーなどのアウトドア用品を販売すれば、レンタルして気に入った場合、購入を迷っていた利用者が購入する可能性があります。
調理体験、クラフト体験、カヌー体験、パラグライダー体験など、体験型アクティビティを企画した場合は体験料の収入があります。
施設の自然を活かした体験や、夏休みに小学生の自由研究へつながるような企画、家族みんなで楽しめる企画は人気があり、参加すること自体を目的に来場してもらえ、集客にもつながります。
次に運営していくに当たって発生してくるコストを見ていきましょう。
一番大きい費用はやはり人件費でしょう。
足りなければサービスが行き届かないし、多すぎれば経営を圧迫します。
責任をもって管理する正規職に加え、繁忙期は短期のアルバイトの配置でカバーすれば、効率よい運営が出来そうです。
重要なライフラインである水も、上水道を使えば費用が掛かります。
当然ながら電源付サイト、管理棟や共有部分の電気代も発生します。
他にガス代、灯油代などがあるでしょう。
設備や備品、レンタル品なども維持する上でどうしても修理や補修といった修繕費がかかります。
自分で修繕すればコストも低く抑えられますが、材料費は発生します。
業者に依頼するグリストラップの清掃なども定期的な費用になります。
予約を受け付けるために不可欠なホームページやメールのためのインターネット接続、電話などの費用が掛かります。
予約受付サイトを利用する場合は別途利用料が必要です。
フリーwifiサービスを提供するのであればそのコストも発生します。
施設所有の車両保険、施設の火災・家財保険、食材や食事を提供する場合の食品営業賠償共済など、加入を検討するべき保険があります。
また、施設が原因での利用者のケガにに対する賠償責任に対応する保険が、保険会社から提供されています。
万が一の時のために入っておけば安心です。
より多くの利用者に知ってもらい、利用してもらうために必要な費用です。
キャンプ場検索・予約サイトへ報酬または掲載料、チラシやポスターの印刷、ネット広告、情報誌や雑誌への掲載料などがあります。
草刈り、清掃など、業務の一部を外部委託する場合はその費用が掛かりますが、その分自前のスタッフを配置しなくて済むメリットもあります。
その他、イベントやワークショップ、体験アクティビティなどを外部講師に委託するケースも考えられますね。
具体的な収支を公開している一般のキャンプ場はありませんでしたが、「指定管理者制度」のキャンプ場の運営状況報告書を見つけました。
そもそも市民の福祉の増進などを目的としているため、利潤を追い求める経営方針ではありませんが、費用がどのくらいかかるのかなど参考になる点もありますのでご紹介します。
大分県長者原オートキャンプ場 運営報告
平成29年度(4月~3月)
指定管理者:有限会社吉武建設
キャビン | 10 |
オートキャンプサイト | 40 |
フリーテントサイト | 40 |
炊飯棟 | 2 |
駐車場 | 40 |
利用者数 | 6,914人 |
営業期間 | 通年営業 |
利用料金
入場料 | 一般540円・小学生330円 | |
宿泊利用一泊 | ケビン | 16,200円 繁忙期:19,440円 |
オートキャンプサイト | 4,320円 繁忙期:5,400円 | |
フリーテントサイト | 3,780円 繁忙期:4,320円 | |
日帰り利用 | ケビン | 5,400円 繁忙期:6,480円 |
オートキャンプサイト | 1,950円 繁忙期:2,160円 | |
フリーテントサイト | 870円 繁忙期:1,080円 |
利用料 | 17,811,000円 |
自主事業(体験イベントなど) | 1,090,000円 |
その他(借受消費税等) | 104,000円 |
合計 | 19,005,000円 |
人件費 正規職:4名 パート:5名 | 11,513,000円 |
維持管理費 | 6,442,000円 |
自主事業(体験イベントなど) | 641,000円 |
その他(仮払消費背等) | 106,000円 |
合計 | 18,702,000円 |
収入:19,005,000円 - 支出:18,702,000円 = 303,000円の利益
同資料では平成26年度から平成29年度の収支を確認できます。上記の29年度は若干の黒字決算になっていますが、赤字決算の年もあります。この場合は自治体所有で利益優先経営ではないこともありますが、経営には工夫が必要になることが読み取れます。
参考 大分県長者原オートキャンプ場大分県ホームページキャンプ場の経営は決して楽ではないことがわかりました。
経費を削減し、売り上げを伸ばす工夫が必要なようです。
人件費をはじめとする経費も、外部委託や季節アルバイトを活用すれば削減が見込めます。
通年常時雇用の正規職員は極力減らし、繁忙期にはアルバイトスタッフに活躍してもらえば固定費が抑えられます。
草刈りや清掃作業も、業者や地域のシルバー人材センターへ外部委託することで人員を割かずに済み効率がアップします。
宿泊施設も初期費用が大きくかかるコテージやバンガローではなく、低く抑えられるグランピングテントを採用することで初期投資を早く回収することが可能になります。
収入の項でも紹介した通り、設備や提供するサービスなど工夫次第で収入増加を見込める可能性は大いにあります。
例えばグランピング要素を取り入れれば、サービスが充実している分価格も高めに設定できます。
それだけでなく、行き届いたサービスが特徴のグランピングは、慣れない人でも安心して利用することが出来ます。初心者や子連れファミリー、手ぶらキャンパーといった層から「選ばれる」キャンプ場になります。
また、週末や繁忙期に予約がいっぱいになってもサイト数は限られています。やはり平日の稼働率をどれだけ上げられるかが明暗を分けるカギと言えるでしょう。
平日稼働率を上げるアイデアについては、こちらの記事で紹介していますので併せて参考にしてください。
利用者の希望に寄り添ったサービス提供が、売上増加だけでなくそれ自体が集客力を持つ、と言えるでしょう。
取り組み次第で「キャンプ場の経営は儲かる!」と言える余地は十分にあるのではないでしょうか。
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記事拝読いたしました。
長者原オートキャンプ場の運営報告の部分で収入の部の内容と合計額の計算が合っていないように思うのですが、ご回答いただけますでしょうか?
コメントありがとうございます。
内訳を参照する年度を誤っておりましたので訂正いたしました。