アウトドア市場は成長しているものの、一般キャンプ場の多くは経営が厳しく閉鎖廃業や休業に至るケースも目立ちます。
一方で赤字経営に苦しみながらも立て直しをはかり、人気キャンプ場へと変貌した事例があります。
この記事ではキャンプ場経営難を再生した成功事例と、立て直し・飛躍のカギを紹介します。
いなかの風キャンプ場(長野)
小黒川渓谷キャンプ場(長野)
経営を立て直したのは「クロスプロジェクトグループ」(本社:長野県)。
経営難に苦しんでいたこの二つの施設の経営を同社が2011年からはじめたところ、いなかの風キャンプ場では売上が5倍に、黒川渓谷キャンプ場では売上が2倍に増加したそう。
同社の取り組みを具体的に見てみましょう。
例えば利用者を利用サイトまで案内していた結果、受付が無人になり次に来た利用者が案内を受けられない事態が起きる。人件費がかかる上に利用者には不満が溜まり、売上が少ないという悪循環が起きていた。そこで利用者に自分で利用サイトまで行ってもらえるように動線を変更し、スタッフはなるべく事務所から出ないように。
結果、人件費の削減につながり、案内もスムーズになった。
従前利用者に持ち帰りをお願いしていたゴミを、捨てて行ってもらうようにルール変更。捨てて行ってもらう代わりにキャンプ場の美化に協力してもらう。利用者はゴミを持ち帰らずに済み、施設がきれいな状態に保たれ、利用者の満足度もアップした。
あまり道具を持っていない初心者や家族連れ、手ぶらで楽しみたい人向けに、レンタル品を充実させた。初心者の女性でも抵抗なく足を運んでもらえるように、使ってみたくなるような新しく洗練された品揃えを充実させた。結果レンタル利用者が増え、客単価が1.8倍に上昇。
上級者を大事にしすぎず、初心者や一見さんの声に耳を傾け、初心者でも気軽に楽しめるキャンプ場づくりを心掛けた。そのことで間口が広がり新たな利用者の拡充につながった。
こちらのキャンプ場では
ことで、客単価・利用者数共に上昇し経営が飛躍的に好転しました。
大厳寺高原キャンプ場(新潟十日町市)
こちらのキャンプ場の再建に取り組んだのはスノーピーク(新潟県三条市)。
キャンプスタイルが変遷しているのに、昔風の区画割りのまま運営されていた当施設。登山用の小さなテントしか張れないような区画割りで、現在主流のオートキャンプスタイルに対応できていなかったのを見直した。
豪雪地帯ゆえに11月~5月は休業していたのですが、コンサルティングを引き受けたスノーピーク代表の山井さんは、春夏秋冬すべての季節に実際にキャンプをしてみたそう。そこで気付いたのが、残雪と新芽が同居する3月~4月の美しさ。たくさんの人に見てほしいと立ち上げた季節限定イベント「雪と新緑と山菜のキャンプ」が大成功。自然の美しさに加え山菜も楽しめるとあって集客数350%アップという大変な人気ぶりで、今後も更に増えることが予測される。
豪雪地帯という不利にもなる立地条件を逆手にとり、その魅力を見つけ出して利用者に訴えることで集客に成功した例です。
スノーピーク奥日田キャンプフィールド(大分県日田市)
もともとは「旧椿ヶ鼻ハイランドパーク」として運営されていた当施設。
こちらも改修コンサルティングはスノーピーク(新潟県三条市)。
「理想のキャンプ場を考える」キャンプイベント(モニタリングキャンプ)をそこで開催。キャンパーとスタッフ混合でワークショップをおこない、キャンパーの本音を直に反映させる形で日田市に提案。キャンプ場にはそぐわない沢山の人工物で溢れていた当施設。ローラーコースター、ローラースケート場などを撤去して新たなサイトを区画。一変して眺望のすばらしいキャンプ場へと生まれ変わった。
水道に電源、きれいな炊事場やシャワーなど、初心者や女性客、ファミリーでも快適に過ごせるように整備。レンタル品も充実させると同時にアウトドア用品ショップも併設され、忘れ物をしても安心して利用できるキャンプ場になった。
キャンプの魅力を阻害する不要な設備を徹底排除して、自然の魅力を楽しめるようにすると同時に、快適に過ごせる設備とサービスを充実させることで「また来たい」と思ってもらえるキャンプ場へ生まれ変わった例です。ユーザーの声を直に取り入れ反映させるという取り組みも、満足度の高い施設へ進化した大きな要因と言えるでしょう。
スノーピークおち仁淀川(高知県高岡郡越知町)
元々は自治体が抱えていた寂れたキャンプ場でしたが、こちらもスノーピーク(新潟県三条市)がコンサルティングを引き受けました。
「仁淀ブルー」として、独特の青色で透明度が高い流れの美しさで有名な仁淀川でのラフティングをツアーを用意。仁淀川の流れは緩やかなので三歳以上から初心者でも楽しめる人気のアクティビティとなっている。ラフティングだけの利用もできるようにしたことで来場者の間口を広げたことで利用客が増加した。
高知に豊かに残った自然を楽しみながらも快適に過ごせるよう気配りの行き届いた設備を整えた。温水の出る炊事場、ウォシュレット付トイレ、コインロッカー、24時間使用できるシャワー。充電コンセント、炭捨て場や焚き火台を洗いやすい洗い場など、時流を組んだ独自の設備も用意した。
自然の風景に溶け込む「住箱」を設置。建築家の隈研吾氏とのコラボレーションで生まれたこの木造トレーラーハウスは、閉塞感なく快適に過ごせる移動式住居として注目を集め、ここに泊まることを目的とする来場客も訪れるように。
自然を損なわずに快適に過ごせるインフラの整備、自然そのものを楽しめるよう工夫したこと、そしてノウハウのない自治体がキャンプを知り尽くしたコンサルタントを入れたことにより経営再建へとつながりました。
ふれあいの里(茨城県東茨城郡城里町)
1983年に開設され、当時のキャンプブームもあり順調な売り上げが続いていましたが、96年をピークに徐々に売り上げは減少。不況、キャンプ人口の減少に加え2011年は東京電力福島第1原発事故の風評被害もあり赤字に転落してしまいました。
2014年から生き残りを懸け、さまざまな取り組みを行った結果、2019年2月には売り上げが7833万円を達成。これまで最高だった1996年度の7614万円を上回りました。
客単価を上げるための新事業として、テントの設営なしで楽しめるティピーテントサイトを用意。食事準備の手間を省くためバーベキュー食材の提供も始めた。
地元食材を使った調理体験、釣り、クライミング体験などを用意。また近隣の温浴施設へのバス送迎も始めた。
初心者にも扱いやすいドームテントや人気の焚き火台などのレンタル機材を充実させ、多様化するキャンプニーズへ対応。
また星空観望会や野外映画上映会などの新しいイベントも企画した。
35周年となる2018年には、地元食材を使った朝食提供を開始、宿泊客の増加に対応するため冷暖房完備のキャビンの新設を行った。
グランピング流行に対応、手軽にキャンプを楽しみたいというユーザーのニーズを捉え、初心者やファミリー層を取り込めたことが成功のカギと言えるでしょう。
自然環境や地場の野菜、周辺施設や人材など、地域が持てる資源を活用し、地元を巻き込んでの取り組みも大きな成功要因となりました。
やすらぎの森オートキャンプ場(長野県信濃町)
利用者の減少により2012年から閉鎖され休眠していたキャンプ場を特定非営利活動法人 Nature Serviceが運営を再開させました。
2017年4月に予約サイトを見直したところ、受け付け開始から2日間で長野県にある182のキャンプ場中アクセスランキング1位を獲得。ゴールデンウイーク営業だけで2016年の年間来場者数を上回るという見事な飛躍を遂げました。
フリーサイトの他、他グループとは距離を置きたい人向けの「ロンリーサイト」、森を堪能する「フォレストサイト」、絶景を独り占めできる「プレミアサイト」、フルフックアップのキャンピングカー専用ゾーンなど、ユーザーの多様なニーズに応えられるサイト編成に改修。さらにドッグランの設置などWi-Fi環境も整備したことで、ヘビーユーザーからライトユーザーまで新規利用者の獲得に成功。
キャンプ場専門の予約サイトを利用することで、自社サイトだけでは取り込めなかったユーザー層の獲得に成功。
また地域に眠る魅力を、Facebook、Instagram等のSNS、運営者の自社Webメディアで積極的に情報発信したことが、ネットを利用する層=キャンプ場予約サイトの利用者層のニーズに合い利用客の増加へと繋がった。
夏休みの自由研究に使えるワークショップ、ものづくり体験などの親子向け企画、大人が楽しむ夜の「焚き火BAR」など、魅力的なイベントを開催。参加すること自体が目的にもなるようなイベントを開催することでファミリー利用客に選ばれるキャンプ場となった。
多様なニーズに対応する改修だけでなく、キャンプ場専用予約サイトの活用や、SNSなどでの地道な情報発信により、ネットを多く利用する層へのアピールに成功し利用者が激増した要因と思われます。
どのキャンプ場も、アイデアと地道な努力で見事経営再建を果たしています。
せっかくの施設を有効に活用し、持続可能な収益化を目指すために有効なアイデアをご紹介しました。